−岸田は何をみたのか−

Literature of the Formosan moles and related papers

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Last update: 17 November 2009

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凡例 全体を通して，旧漢字，旧仮名遣いの部分は現代的表現に変更した 《》：安田雅俊＠森林総研による注 *：安田雅俊＠森林総研による邦題の英訳 青字：現時点で原著にあたっていないもの＆個人的なメモ 赤字：重要と思われるポイント 緑字：学会の年次大会などの記録

• 初期の論文は未入力です．
  
  
• Swinhoe, R. (1862) On the mammals of Formosa. Proc. Zool. Soc. London, 347-365.
  
  
  • 未入力
    
  • Talpa insularis SWINHOEの記載論文
    
    
    
• Swinhoe, R. (1870) Catalogue of the mammals of China (south of River Yangtsze) and the Island of Formosa. Proc. Zool. Soc. London, p. 615-653.
  
  
  • 未入力
    
    
    
• 《1888年（明治21.8.25）．岸田久吉，京都府に生まれる》
  
  
• 《1889年（明治22）．黒田長礼，東京市に生まれる》
  
  
• 《1895年（明治28）．台湾が日本の植民地となる．〜1945年（昭和20）》
  
  
• 《1906年（明治39.10.24）．鹿野忠雄，東京に生まれる》
  
  
• 《1907年（明治40.3.20）．高島春雄，東京に生まれる》
  
  
• Thomas, O. (1907) The Duke of Bedford's zoological exploration in Eastern Asia. Proc. Zool. Soc. London, p. 463.?
  
  
  • 未入力
    
    
    
• 《1910年（明治43.7）．青木文一郎，東京帝国大学理学部生物学科を卒業．理学士》
  
  
• Aoki, Bunichiro (1913) A hand-list of Japanese and Formosan mammals. Annotationes Zoologicae Japonenses. 8 (2): 261-353. （大正2）《（注）東京動物学会刊行，雑誌の和名は日本動物学彙報 ；後継誌は日本動物学会刊行の動物学雑誌》
  
  
  • 《p. 268より引用》
    6. Mogera insularis (Swinhoe).
    Talpa insularis, Swinhoe, P. Z. S., 1862, p. 10; ibid., 1870, p. 620.
    NOM. ANG. Formosan blind mole.
    DIST. Formosa (Swinhoe).《引用おわり》
    
    
    
• 《1915年（大正4.7）．黒田長礼，東京帝国大学理学部生物学科を卒業．理学士》
  
  
• 《1915年（大正4.11）長男（享吉）誕生》
  
  
• 《1918年（大正7.1）長女（田鶴子）誕生》
  
  
• 《1918年（大正7.9.16）．岸田久吉，東京帝国大学理学部動物学科選科入学．動物学教室に所属．1921年（大正10.5.7）卒業．後に，同教室が中心であった東京動物学会の動物学雑誌の編集(1922-1924)をつとめる．》
  
  
• 《1919年（大正8）当時，岸田久吉の実兄が台湾在住》
  
  
• 黒田長礼 (1919) 日本産哺乳類の和名に就て. 動物学雑誌. vol. 31 (no. 374): 377-383. （大正8.12）
  Kuroda, Nagamichi (1919) On Japanese name of mammals from Japan*. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 31 (no. 374): 377-383.
  
  
  • Aoki (1913)と森為三(1916)『朝鮮産脊椎動物目録』をベースとした日本産哺乳類の和名のリスト．
    
  • Mogera insularisの和名としてのタカサゴモグラの初出．
    
  • モグラ(Mogera属)については，タカサゴモグラ(M. insularis (Swinhoe))の他に，ヤクシマモグラ(M. wogura kanai Thomas)，チョウセンモグラ(M. wogura coreana Thomas)，コウベモグラ(M. wogura kobeae Thomas)が挙げられている．
    
    
    
• Kuroda, Nagamichi (1920) On a collection of Japanese and Formosan mammals. Annotationes Zoologicae Japonenses. 9: 599-611. （大正9)
  
  
  • モグラ(Mogera属)についてはMogera wogura wogura (Temminck)の記述のみ．
    
    
    
• 《岸田久吉 (1920) トタテクモ科の新属新種ワタセグモに就て. 動物学雑誌. vol. 32 (no. 384): 299-307. を発表（大正9.10）》
  
  
• 《1921年（大正10.3）次男（信吉）誕生》
  
  
• 《1921年（大正10.7.1）〜1948年（昭和23.3.31）．岸田久吉，農商務省農事試験場において非常勤嘱託．大正10.7〜嘱託事項「害虫の駆除予防に関する試験」．大正11.6〜嘱託事項「鳥獣調査に関する事務取扱」．なお，嘱託制度は1948（昭和23）に閣議決定により廃止された．》
  
  
• 《1921年（大正10）頃．鹿野忠雄，蚕糸試験場（当時，高円寺）の横山桐郎の元に出入りし，昆虫学を学ぶ．》
  
  
• 《1923年（大正12.1.25）日本哺乳動物学会が，深瀬庄三郎，田子勝弥，内田清之助，黒田長礼，小林植助，岸田久吉により設立》
  
  
• 《1923年（大正12.4）次女（静子）誕生》
  
  
• 《1923年（大正12.9.1）関東大震災．震災後の鳥獣調査室は1924-1938年の間，農林省農事試験場の実験室を借用していた》
  
  
• 岸田久吉 (1924) 哺乳動物図解. 農商務省農務局. 429 pp. (大正13.10《（注1）表紙には大正13.10と記してあるが，奥付では大正14.3となっている》; 《（注2）1926に日本鳥学会から第2版が出版されている．要確認》)
  
  
• Kishida, Kyukichi (1924) Illustrated Monograph of Japanese Mammals*. Ministory of Agriculture, Japan. 429 pp.
  
  
  • 台湾の哺乳類への言及はあるが，台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 岸田久吉 (1924) 台湾産翼手目に就て. 動物学雑誌. vol. 36 (no. 425): 127-139. （大正13.?）
  Kishida, Kyukichi (1924) Supplements to the knowledge of Japanese Chiroptera*. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 36 (no. 425): 127-139.
  
  
  • 実兄が台湾在住であるとの記述あり．実兄から送られてきた標本も調査したとの記述あり。
    
    
    
• 岸田久吉 (1924) 台湾産翼手目に就て. 動物学雑誌. vol. 36 (no. 423): 30-49. （大正13.?）
  Kishida, Kyukichi (1924) Formosan Chiroptera*. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 36 (no. 423): 30-49.
  
  
  
• 《1924年（大正13）．黒田長礼，東京帝国大学から理学博士を取得．日本で最初の鳥類学の博士》
  
  
• 黒田長礼 (1925) 台湾産哺乳類の蒐集品に就て. 動物学雑誌. vol. 37 (no. 435): 1-16. （大正14.1）
  Kuroda, Nagamichi (1925) On a collection of mammals from Formosa*. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 37 (no. 435): 1-16.
  
  
  • 《p. 1より引用》
    1. Mogera insularis (SWINHOE).
    1862 - Talpa insularis SWINHOE, P.Z.S., 1862, p. 356. [Formosa.]
    和名　タカサゴモグラ（黒田）
    本種標品一個をオーストンより購入す．内地産の各亜種に比し遥かに小形なり．乾標品につき完全なる測定を為し得ず故に略す．
    番号　977　性　不明
    採集地　台北
    採集年月日　1909年6月12日（菊池米太郎氏採集）《引用おわり》
    
    
    
• 《1925年（大正14.4）三男（有吉）誕生》
  
  
• 岸田久吉 (1925) 動的及立体的に見たる日本産哺乳動物の分布論（上）−哺乳動物研究の立場から−. 東洋学芸雑誌. vol. 41 (no. 505): 57-68. （大正14.5）
  Kishida, Kyukichi (1925) Distribution of Japanese mammals dynamically considered*. Toyo Gakugei Zasshi. vol. 41 (no. 505):
  
  
  • 上には「一　台湾と其の周囲」と「二　九州と琉球島弧」を含む．
  • （台湾の哺乳動物の特産種は）食虫目ではタカサゴモグラとタイワンハリネズミが特産のもので，前者の近親は対岸のフクケンモグラ，後者の近親はハイナンハリネズミであります．タイワンジャコウネズミも印度の原産とは別の亜種とする学者がありますが，小生は当分同じものとして置く考であります(p. 60)．
  • 台湾本島には食虫類のタイワンモグラ，タイワンジャコウネズミ及ジャコウネズミが居ますが分布問題で大切なのは支那に近親を有つ所のモグラだけであります(p. 64)．
    
  • 上記のように，岸田はここで台湾のモグラを「タカサゴモグラ」とも「タイワンモグラ」と呼んでいる．
    
    
    
• 岸田久吉 (1925) 動的及立体的に見たる日本産哺乳動物の分布論（下）−哺乳動物研究の立場から−. 東洋学芸雑誌. vol. 41 (no. 506): 131-144. （大正14.6）
  Kishida, Kyukichi (1925) Distribution of Japanese mammals dynamically considered*. Toyo Gakugei Zasshi. vol. 41 (no. 506): 131-144.
  
  
  • 下には「三　壱岐対馬」と「四　宗谷及津軽両海峡」，「五　千島列島」を含む．
  • 台湾のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 堀川安市 (1925) 台湾産哺乳類. 台湾博物学会会報. vol. 15 (no. 79&80): 224-237.（大正14.8）
  Horikawa, Yasuichi (1925) Mammal in Formosa*. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 15 (no. 79&80): 224-237.
  
  
  • 《p. 224より引用》
    食虫目
    モグラ科
    (1) タカサゴモグラ
    台北市（堀川）
    新竹州大湖
    台南市虎尾郡崙背
    屏東街（山口）
    備考　全島に産するものなるべく，農業上有害なり精査せば亜種を分つ要あるが如し．《引用おわり》
    
    
  • p. 233の表では，タカサゴモグラ は台湾の北部で生息が確認されていることになっている．
    
    
    
• 小山巌 (1926) 歯牙を中心とする本邦食虫類の研究. 日本歯科口腔科学会雑誌. no. 24: 10-31.（大正15）
  
  
  
• 木場一夫 (1926) 琉球島孤のFaunaに就て. 博物学会誌. no. 33: 52-80.（大正15.2）《（注）東京高等師範学校博物学会会誌》
  Koba, Kazuo (1926) Fauna of Riu Kiu islands*. Hakubutugakkaishi. no. 33: 52-80.
  
  
  • 木場 (1926)は岸田 (1925)の要約として次のように述べている．《以下，p. 57より引用》
    「台湾本島には食虫類のタイワンモグラ，タイワンジヤカウネズミ，ジヤカウネズミが居ますが分布問題で大切なのは支那に近親を有つモグラだけであります」《引用おわり》
    
    
    
• 岸田久吉 (1926) ネズミ. 動物教材の根本的研究, 国定理科書 第五学年. pp. 71-151. 文洋社. （大正15.6）
  
  
  
• 岸田久吉 (1926) 富士産動物概論. 東洋学芸雑誌. vol. 42 no. 11: 653-663. （大正15.11）
  
  
  
• 木場一夫 (1927) 琉球孤島の動物相に就て (II). 博物学会誌. no. 34: 25-30.（昭和2.2）《（注1）東京高等師範学校博物学会会誌; （注2）「島孤」→「孤島」に訂正の記述あり，後に木場により「孤」→「弧」の訂正あり》
  Koba, Kazuo (1926) Fauna of Riu Kiu islands (II)*. Hakubutugakkaishi. no. 34: 25-30.
  
  
  • 1926年の第三回汎大平洋学術会議の議論を受けて，木場 (1926)を補足したもの．台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 《岸田久吉 (1927) マングースの食性調査成績. 鳥獣調査報告. no. 4: 79-120. 畜産局編, 日本鳥学会, 東京（昭和2.3）》
  
  
• 《岸田久吉 (1927) 猟期に於けるイタチの食性調査成績. 鳥獣調査報告. no. 4: 121-160. 畜産局編, 日本鳥学会, 東京（昭和2.3）》
  
  
• 《岸田久吉 (1927) ヒリピンの動物界. 理学界. vol. 25 no. 9: 781-786.（昭和 2.9）》
  
  
  • 山村楳次郎(Dr. Umejiro Yamamura)氏らの標本の話とフィリピンの生物地理学についての記述．
    
    
    
• 鹿野忠雄 (1928) 新高山彙の動物学的研究（予報）. 台湾山岳. vol. 3: 51-93.（昭和3.?）
  Kano, Tadao (1928) A preliminary report on the zoological study in the Niitaka mountains. Taiwan Sangaku. vol. 3: 51-94.
  
  
• • 16種の哺乳類を列挙した後に《以下，p. 56より引用》
    新高山附近に於ける哺乳類の探究には甚だしいブランクが残されて居る．附近の巡査氏の話や又蕃人の話に依ると，一寸想像もつかぬ様な獣類の生存を思わせられる．ネズミ，リス，ムササビ等も尚追加されるであろうし，又，カワウソやテンの類も発見されるだろう，又，コウモリが一種も知られていないのは此の深奥の領域の暗黒を物語るものと言えよう．《引用おわり》
    
  • 新高山動物の垂直分布として，熱帯，暖帯，温帯，寒帯の四帯を区分した後に《以下，p. 85-86より引用》
    (1) 熱帯（水裡穴〜ナマカバン手前）
    平地及山麓一帯二千尺以下の地帯には，（植物の名前は略）等が生えて居る．此の地帯の動物中代表的なものを挙げると，次の如くである
    1. タカサゴモグラ (Mogera insularis (Swinhoe))《引用おわり》
    
    
    
• 堀川安市 (1929) 台湾哺乳類調査資料 (1). 台湾博物学会会報. vol. 19 (no. 100): 75-82.（昭和4.2）
  Horikawa, Yasuichi (1929) Material for the study of the Formosan Mammals. I. Genus Mus from Formosa*. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 19 (no. 100): 75-82.
  
  
  • 台湾産 Mus属の報告．
    
  • 台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 《1929.4.3-5，岸田，日本動物学会第5回大会（東京）に出席》
  「ヒメヒミズ骨学短見」を発表（動物学雑誌 vol. 41, nos. 490&491: 393）
  
  
• 堀川安市 (1929) 台湾哺乳類資料 (2). 台湾博物学会会報. vol. 19 (no. 101): 129-135.（昭和4.4）
  Horikawa, Yasuichi (1929) Material for the study of the Formosan Mammals. 2. Rats and mice from highlands*. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 19 (no. 101): 129-135.
  
  
  • 台湾の高山の鼠についての報告．
    
  • 台湾産のモグラについての記述なし．
    
  • 鹿野忠雄が台湾高地で採集したネズミ類の標本の記述がある．
    
    
    
• 鹿野忠雄 (1929) 台湾産哺乳類の分布及習性. 動物学雑誌. vol. 41 (no. 489): 333-340. （昭和4.7）
  Kano, Tadao (1929) On the distributions and habitats of the Formosan mammals. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 41 (no. 489): 333-340.
  
  
  • 台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 《1929年（昭和4.9.16）．蘭山会（蘭山会機関雑誌 [Lansania - Journal of Arachnology and Zoology] の発行団体）が，本田正次，金子光司，岸田久吉，中島利重，向坂道治，高橋雄一，田中孝治により設立》
  
  
  • 同年，鹿野忠雄がLansaniaに，Kano, T. (1929) A contribution to the Coleopteran fauna of Loo-Choo Islands, with description of new species (1). Lansania, vol. 1, no. 9: 143-144を発表（日本語タイトル：琉球群島の甲虫　第一報）．発行日：1929.12.13；受理(Received)日：1929.11.15；また，著者住所：348, Kashiwagi, Yodobashi-cho, suburb of Tokyo, Japanとの記載あり．この論文の存在によって，鹿野忠雄と岸田久吉との間に交流があったことがうかがえる．
    
    
    
• 《岸田久吉 (1929) ハツカウサギ類雑報. Lansania. vol. 1, no. 3: 34-38.（昭和4.9）
  Kishida, Kyukichi (1929) Something about piping hares, Ochotonids. Lansania. vol 1, no. 3: 34-38.
  
  
  • ここでいうハツカウサギとはナキウサギを指す．
  • 和名の変更は原則的には推奨されないが，必要な場合があると述べた後に，以下《p. 35より引用》
    哺乳類の和名には黒田長礼氏が動物学雑誌 Vol. 31, No. 374 《（注）黒田 (1919)を指す》に於て假に作られたものが少なくない．特に当時同氏は実物を詮議して居られず，また，文献も有たれず，主として青木文一郎氏の目録相手に悉く和名を提出されたので，今日私の如く，哺乳動物再査の業に従事する者はいろいろの点で非常に迷惑をする．故に鳥の博士として名高くなられた今日に於ては同氏の権威を冒す様にあたってお気の毒ではあるが，世間の使用に適する様に変更を加えて行くつもりである．《引用おわり》
    
  • 岸田久吉と黒田長礼の確執がうかがえる．
    
  • 関連する文献として，岸田久吉 (1933) ハツカウサギ（廿日兎）綜説. 動物及び植物. vol. 1 no. 1: 21-34.がある．》
    
    
    
• 《1930年（昭和5.4）．鹿野忠雄，東京帝国大学理学部地理学科入学》
  
  
• 鹿野忠雄 (1930) 台湾産哺乳類の分布及習性(二). 動物学雑誌. vol. 42 (no. 499): 165-173. （昭和5.5）
  Kano, Tadao (1930) On the distributions and habits of the Formosan mammals (2). Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 42 (no. 499): 165-173.
  
  
  • 台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 《1930.8.2-3，岸田，日本動物学会第6回大会（札幌）に出席》
  「日本北帯のmammal faunaに就いて」を発表（動物学雑誌 vol. 42, no. 504: 372-373）
  
  
• 高島春雄 (1930) 日本哺乳動物名彙. 台湾博物学会会報. vol. 20《（注）1930.8は原本では vol. 21となっているが，前後の号(1930.6と1930.10)は vol. 20であり，また1931年刊行分が真のvol. 21であることから，本論文は vol. 21ではなくvol. 20に掲載されたものである》: 195-217.（昭和5.8）
  Takashima, Haruo (1930) Standard Japanese names for the Mammals of Japan, I. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 20: 195-217.
  
  
  • 1-6として，Talpa wogura, Mogera wogura kobeae, Mogera wogura kanai, Mogera wogura coreanaのの記述の後に以下の記述がある．
    《p. 206より引用》
    7. Talpa insularis, SWINHOE, P. Z. S., p. 10 (1862)
    タカサゴモグラ（黒田氏）；タイワンモグラ（岸田氏）；ヒメモグラ（岸田氏）；不看天（台湾）
    岸田氏は台湾産のものをヒメモグラと呼ぶのに対して1より6までをオオモグラ（類）と申されて居る．氏は台湾産のものはすべてタイワン…朝鮮産のものはコウライ…と呼ぶことになさって居り是には理由もあることではあるが，私は例えば台湾産のものならタイワン，タカサゴ何れでも先に出た方を採ることにして居る．どちらかに統一すれば記憶の上からも便宜であるが両様ある処に却って変化もあって面白い気がするので旁々先取権で行くことにした．《引用おわり》
    
    
    
• 青木文一郎 (1930) 哺乳動物より観たる台湾島と其周囲. 地学雑誌. vol. 42 (no. 499): 501-509（昭和5.9）
  Aoki, Bunichiro (1930) Mammals from Formosa island and its surrounding area*. Chigaku Zasshi. vol. 42 (no. 499): 501-509.
  
  
  • 《p. 503より引用》
    INSECTIVORA
    1. Mogera insularis (SWINHOE)　タカサゴモグラ（黒田）　台北（黒田）《引用おわり》
    
    
    
• 堀川安市 (1930) 台湾哺乳類資料 (4). 台湾博物学会会報. vol. 20: 276-284.（昭和5.10）
  Horikawa, Yasuichi (1930) Material for the study of the Formosan Mammals (IV). Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 20: 276-284.
  
  
  • センザンコウ，ムササビ，イノシシ，ヒョウの計測値，検索表，習性などの記述．
    
  • 台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 堀川安市 (1930) 台湾動物の分布に就いて (1). 台湾博物学会会報. vol. 20: 360-369.（昭和5.12）
  Horikawa, Yasuichi (1930) On the distribution of Formosan animals. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 20: 360-369.
  
  
  • 昆虫，蚊，淡水魚，守宮，鳥の分布にもとづく動物地理学の議論．
    
  • 台湾産のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 《1931年（昭和6.1）四男（正吉）誕生》
  
  
• 岸田久吉 (1931) 日本ノ生物地理学. 動物学概論. 進士織平編. 龍吟社, 東京. (昭和6)
  Kishida, Kyukichi (1931) Biogeography of Japan. Ryuginsha, Tokyo.
  
  
  • 台湾＝南帯として，ヒメモグラ Mogera insularisの記述のみ．
    
    
    
• 《1931.10.30-31，岸田，日本動物学会第7回大会（京都）に欠席》
  「日本産Mogeraの食性概観」の要旨のみ掲載（動物学雑誌 vol. 44, no. 511: 92-93）
  
  
• 堀川安市 (1932) 台湾哺乳動物図説. 台湾博物学会出版部. 121 pp. (昭和7.1)
  Horikawa, Yasuichi (1932) An illustrated Guide to Mammals of Formosa*. The Natural History Society of Formosa. 121 pp.
  
  
  • 《p. 31-32より引用》
    タカサゴモグラ
    Mogera insularis (Swinhoe) 1863　串地鼠（ツンテエツウ）
    本種は台湾特有である．全島に分布し平地から山地に普通であるが内地に比べるとずっと少なく農業者を苦しめる事は聞かない．
    体は円筒形で肥満し頸は認むることを得ない．頭部は円錐形で吻は長く突き出て先端は裸で前方に向かって開いた鼻孔がある．目は小で，耳殻は毛叢中に埋まっている．尾は短小で僅かに10粍内外である．毛は黒褐色か灰褐色で長さは七粍位ある．前肢の掌は扁円で長 1 cm 幅1.7 cmで灰白色を帯び上面には短毛を散生するが下面は無毛，爪は扁長で最長の第三趾が長さ 7.8 mm ある．
    測定表：性, 頭胴 100 mm, 尾 15, 後足 15, 前足 15, 産地 木柵 (47瓦)《引用おわり》
    
    
    
• 堀川安市 (1932) 台湾動物の分布に就いて (2). 台湾博物学会会報. vol. 22 (no. 121): 248-258.（昭和7.8）
  Horikawa, Yasuichi (1932) On the distribution of Formosan animals. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 22 (no. 121): 248-258.
  
  
  • 哺乳類，鳥類，爬虫類，両生類，魚類，昆虫類の分布にもとづく動物地理学の議論．
    
  • p. 249の表では，タカサゴモグラ (Mogera insularis) が琉球と支那に分布することになっている《（注）誤記であろう》．
    
    
    
• 《1932年，岸田，ヤマヂヒメモグラMogerula (Mogera) montana Kishida (1932)をLansania. vol. 4に発表予定．発行されたか否か不明．ただし，以下2件をみよ》
  
  
• Kishida, Kyukichi (1932) The land mammal fauna of the Philippines. Lansania. vol. 4 no. 38: 113-128.
  
  
  • この論文は実在する（例えば，山階鳥類研究所資料室）．また，以下の二つの資料に記述がある．
    
  • 鹿野忠雄 (1936) 紅頭嶼生物地理学に関する諸問題(4). 地理学評論. vol. 12 no. 2: 154-177.のp. 79-80．
    
  • 木場一夫 (1936) 日本生物地理学に関する文献 (II). 日本生物地理学会会報. vol. 6 補遺: 1-23.（昭和11.5）のp. 5．
    Koba, Kazuo (1936) Bibliography of the Biogeography of Japan (II). Bulletin of the Biogeographyical Society of Japan. vol. 6, Supplement: 1-23.
    
  • 高島 (1948)に Vol. 4 no. 38は既刊とされている．
    
    
    
• 《Kishida, Kyukichi (1932) A new species of Piping Hares from Saghalien. Lansania. vol. 4 no. 40: 149-152.（昭和7.11）》
  
  
• 《1932.9.22，岸田，日本生物地理学会第14回例会（東京）に出席》
  「フィリッピン群島の哺乳動物相」を発表（日本生物地理学会会報 vol. 3, no. 2: 149に学会記事あり)
  この例会で鹿野忠雄が「台湾産二三哺乳類の分布及習性」を発表している．他の出席者は山階芳麿，黒田長礼など．
  
  
• 《1932.10.23-24，岸田，日本動物学会第8回大会（台北）に欠席》
  「ヒリピンのLand mammal fauna」を代読で発表，要旨掲載（動物学雑誌 vol. 45, nos. 532&533: 112-114）
  「モグラの孔道生活に就いて」を代読で発表，要旨掲載（動物学雑誌 vol. 45, nos. 532&533: 140）
  
  
• 《1933.2.17，岸田，日本生物地理学会第15回例会（東京）に出席》
  「"Zoogeographica"の紹介」を発表（日本生物地理学会会報 vol. 3, no. 3: 186に学会記事あり)
  鹿野忠雄はこの例会にも出席している．他の出席者は山階芳麿など．
  
  
• • 台湾産の32種の哺乳類の標本を展示したなかにタカサゴモグラ (Mogera insularis)が含まれていたという内容．
    
    
    
• 《1933.3，鹿野忠雄，東京帝国大学理学部地理学科(1930.4-1933.3)を卒業し大学院に進学．1933.5には台湾に渡り昆虫と鳥類の調査を行った》
  
  
• 《岸田久吉 (1933) 動物郷土学の研究. 理学界. vol. 31 no. 2: 114-121.（昭和 8.2）》
  
  
• 青木文一郎 (1933) 台湾産哺乳類動物の説示. 動物学雑誌. vol. 45 (nos. 532&533): 79-80. （昭和8.2&3）
  Aoki, Bunichiro (1933) An explanation of Formosan mammals*. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 45 (nos. 532&533): 79-80.
  
  
• 岸田久吉 (1933) 哺乳類. 岩波講座 生物学 [動物学] (増訂版). 岩波書店, 東京. (昭和8.3)
  Kishida, Kyukichi (1933) Mammals. Iwanami Biology series. Iwanami-shoten, Tokyo.
  
  
  • 現時点でのヤマヂヒメモグラの初出（記載論文ではない．学名なし）．
    
  • 《p. 180-181より引用》
    ２ 台湾低地区　火焼島をも含む．「ヒメモグラ」，「カノヂネズミ」，「トゲネズミ」，「タイワンリス」，「タイワンオオコウモリ」，「タイワンサル」，「タイワンヤマネコ」，「センサンコウ」等が居り，印度・南支那の系統が殆どすべての種類に於いて最も優勢に代表されて居る．
    ３ 台湾高地区　北回帰線あたりで大体海抜1650米以上のところ．新高山を主座とする中央の台湾山脈及びその分派の高峰の所謂温帯林並びに高い所で寒帯林も勿論含まれる．「トガリネズミ」類，「ヤマヂヒメモグラ」，「アリサンネズミ」，「キクチハタネズミ」，「タイワンリス」，「オーストンリス」，小さい「ムササビ」類，「クチビロホホヒゲカウモリ」等が其の主要動物である．《引用おわり》
    
  • つまり，岸田 (1931)と岸田 (1933)の間に，岸田は台湾に2種のモグラの生息を認めたことになる．
    
    
    
• 《岸田久吉 (1933) 動物郷土学研究の今昔. 理学界. vol. 31 no. 7: 601-605.（昭和 8.7）》
  
  
• 《1933年（昭和8.6-10）岸田久吉，第一次満蒙学術調査研究団に参加》
  
  
• 《安田の独り言：この頃，岸田はかなり多忙だったと思われる．岸田(1936)の日光の調査は1931年に行われ，とりまとめは1932年に行われた．また，上記の岩波講座の出版(1933.3)，第一次満蒙学術調査研究団への参加(1933.6-10)，その資料の整理と報告書の出版(1939.12)もある．学会発表の内容をみると，1929-1932年頃は食虫類の研究に傾倒していたようだ．1931年には息子の正吉が誕生している．（コモグラの命名について，岸田と黒田が対立していたのもこの頃）》
  
  
• 《1933.10.24-25，岸田，日本動物学会第9回大会（広島）に出席》
  発表なし．上記の第一次満蒙学術調査研究団から直接広島入りしたと記録（日本動物学雑誌 vol. 45, no. 543: 507 (1933)）にある．
  
  
• 《1933.11.25，岸田，日本生物地理学会第18回例会（東京）に出席》
  「熱河の動物」を発表（日本生物地理学会会報 vol. 3, no. 3: 187に学会記事あり)
  鹿野忠雄はこの例会に欠席している．ちなみに1932-1933年に鹿野が参加した例会は第14, 15, 16, 17回である．開催年月日はそれぞれ1932.9.22, 1933.2.17, 1933.5.18, 1933.10.13．
  
  
• 《岸田久吉 (1934) 満州国熱河省の動物採集旅行雑記. 理学界. vol. 32 no. 1: 12-16.（昭和 9.1）》
  
  
• 《岸田久吉 (1934) 大東京の哺乳動物について. Lansania. vol. 6 no. 52: 17-30.（昭和9.3）
  Kishida, Kyukichi (1932) The mammal fauna of the great city of Tokyo, Japan. Lansania. vol. 6 no. 52: 17-30.（昭和9.3）》
  
  
  
• 岸田久吉 (1935) 動物の分布. 綜合理科教育　講座　第四回, 地人書館, 東京. 48pp.（昭和10.2）
  
  
  • 台湾の動物にも触れられているが，モグラの記述はない．
  • Kishida, M. Y.撮影の「阿里山の遠望」と題した写真が掲載されている．この撮影者は誰なのか？
    
    
    
• Kishida, Kyukichi (1935) Notes on the Acarina - mite and tick, from the island of Formosa collected in August, 1935. Lansania. vol. 7 no. 69: 129-144.（昭和10.10）
  
  
  • Karenkoh(花蓮港)で採集されたMogera (Mogerula) insularisから得られたダニについて記述されている．
    
  • 岸田久吉本人が1935.8.1-8.31に台湾の台北〜東海岸〜中央山脈〜台中〜台南を採集旅行したことが記述されている．
    
  • 同行者に岸田久吉の次男の岸田信吉の名前がある．
    
  • 高地のモグラについては記述なし．
    
    
    
• Kuroda, Nagamichi (1935) Formosan mammals preserved in the collection of Marquis Yamashina. Journal of Mammalogy. vol. 16: 277-291.（昭和10.11）
  
  
  • 《p. 289より引用》
    Family TALPIDAE
    Mogera insularis (Swinhoe)
    Japanese: Takasago-mogura
    One unsexed skin; Riran, Taito, southern Formosa; July 6, 1932.《採集者は折居と思われる←外部計測値の測定者は折居との記述が黒田(1940)にある》
    Measurements. - Head and body, 127 mm.; tail, 12; hind foot, 14.
    Skull. - Greatest length, 30.5 mm.; basilar length, 27; greatest breadth, 14.5; index-number of skull, 442.
    Thomas (Proc. Zool. Soc. London, 1907, p. 463) gives the index-numbers (greatest length x greatest breadth, in millimeters) of the skull as 483-496. The present specimen is therofore smaller than any that he examined.《引用おわり》
    
  • 森林総合研究所図書館所蔵のJournal of Mammalogyの上記の該当箇所(p. 289)にはMogera insularis (Swinhoe)の上にMogerula pilosa Kishidaと万年筆で記入されている．いつだれが記入したのかは不明．山階標本の採集地は台東とあるので，岸田が書いたものだとすると，岸田(1944)のトウブヒメモグラの学名がこれに当るのかもしれない．なお，種小名のpilosaは軟毛におおわれたの意味．想像だが，Kishida (1935)に記された台湾旅行中に岸田は台湾東部でモグラを捕獲し，別種と考えたのではないだろうか．
    
    
    
• 岸田久吉 (1935) 台湾の生物（一）. 理科教育 vol. 4 no. 12: 40-42. (昭和10.12)
  
  
  • 1935年の台湾調査旅行の記事．
  • （一）はヘビについて書かれている．
    
    
    
• 岸田久吉 (1936) 台湾夏の蝶類. 少年昆虫 vol. 2 no. 5: 1-10. (昭和11.4)
  
  
  • 1935年の台湾調査の日程が記述されている．
  • 「昭和10(1935)年の8月一杯を，台湾のダニ採集に費した．その際ついで仕事に蝶をも採集した」とある．
    
    
  • 8/1 基隆に上陸して台北に入りl，8/3一杯滞在．
  • 8/4 台北出発，花蓮港到着，1泊
  • 8/5 午前中，花蓮港で採集と見学．午後瑞穂に到着．
  • 8/5 午後から，7日午前一杯瑞穂で採集．午後台東に向かった．其の地に宿る．
  • 8/8 パンキウの農園に採集．9日はタバラカウに採集し，日奈敷を見学して，知本に1泊．10日は知本から星氏のキナ園のある美和村にかけて採集．11日太麻里の海岸原始林に採集して台東に帰って1泊．
  • 8/12 台東を立って北上し，パシカウを見学．更に北上して，玉里に1泊．
  • 8/13から，謂はゆる八通關越にかかり，8/21に嘉義に出た．此所の蝶を高地のものとして最後にかかげる．その内訳は大体やはり次に記しておかう．
  • 8/13 玉里発，蕨に1泊．
  • 8/14 蕨を立って， 十三里に1泊．
  • 8/15 十三里発，ターフンに1泊．
  • 8/16 ターフン発，ミヤサン1泊．
  • 8/17 ミヤサン発，間もなく花蓮港行とわかれて台中州に入り，秀姑岳に1泊．
  • 8/18 秀姑岳を立って八通關に出て，新高山にかかる．山上に出ると，やがて台南州なのである．日暮れて雨のやみに漸くタータカの鹿林山荘に着いた．
  • 8/19 タータカを出て，児玉に1泊．
  • 8/20 児玉発，阿里山に1泊．先ず謂はゆる阿里山地方を2日余採集した訳である．
  • 8/21 阿里山発，嘉義に行って見学し，夜台南に着いて1泊．
  • 8/22 午前中，糖業試験所と博物館を見学，午後南下して四重渓に宿る．
  • 8/23 午前中雨の中で採集．午後台湾南端のガラン鼻を見学荒れ狂ふタイ風に悩まされ，恒春に1泊．28日の正午近くまで滞在．此の間27日に，墾丁の種畜場とクラル山上の林業試験場を見学．
  • 8/28の正午前に恒春を立って，高雄まで難行をして，夜汽車で台北に向った．
  • 8/29 早朝台北に帰着．此日と次の30日は台北及附近を採集や見学した．特に30日には芝山巌に採集を行った．
  • 8/31 朝台北を立って基隆に着き，乗船一路東京へと急いだ．
    
    
    
• 《1936年（昭和11.6）東亜蜘蛛学会（後の日本蜘蛛学会）設立．岸田久吉も発起人の一人．岸田は評議員（学術相談）として学会の運営に参加．》
  
  
• 《台湾の最初の国立公園として，大屯山一帯，次高タロコ一帯，及び新高阿里山一帯の三ケ所が候補地となった．それをうけて発行された『台湾の山林』特集号に以下の記事があるが，モグラについては触れられていない．》
  
  
  • 鹿野忠雄 (1936) 氷河問題と次高山の思出. 台湾の山林 no. 123: 50-52. (昭和11.7)
    
  • 堀川安市 (1936) 国立公園候補地の動物. 台湾の山林 no. 123: 53-56. (昭和11.7)
    
    
    
• 田中亮 (1936) 台湾産食虫目に就いて. 台湾博物学会会報 vol. 26 (nos. 155-156): 310-313. (昭和11.9)
  Tanaka, Ryo (1936) On the insectivorous fauna in Taiwan, Japan. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 26 (nos. 155&156): 310-313.
  
  
  • 《p. 310-311より引用》
    本教室《（注）著者所属：台北帝国大学理農学部動物学（比較形態学，哺乳動物学）教室》によって昭和四年九月以来採集された食虫目標本の整理を，青木教授の命によりなしたる結果より，台湾産食虫目の現況を報告する（未知未解決の部分は追って調査の予定）．
    Talpidae
    Mogera insularis (SWINHOE) 1962 タカサゴモグラ
    Talpa insularis, SWINHOE, P. Z. S. Lond. 1862 p. 10; ibid. 1870 p. 620.
    Mogera insularis, AOKI, Annot. Zool. Jap. 8 (2) p. 268 (1913); 黒田, 動雑, 37 (435) p. 1 (1925); 青木, 地学雑誌 42 (199《（注）499の誤り》) (1930); 堀川, 台湾哺乳動物図説 p. 31 (1931); 青木, 動雑,45 (532, 533) p. 79 (1933); KURODA, J. Mamm. 16 (4) p. 289 (1935).
    
    分布，台北 (黒田 '20)，リラン（台東廳） (黒田 '35)，台湾全島に分布し，平地から500 mの高地に及ぶ (堀川 '31《（注）'32の誤りか》)．
    
    当教室の標本は台北，木柵，草山，（台北州）等に採集され，頭胴長107-130 mm.，尾長13-21 mm.，後肢長13-17 mm.を示している．尚1935年3月阿里山沼ノ平(2200 m.)にて一頭の雄を採集した．この個体は平地産に比すると測定に於いては大差ないが，毛皮の総体的の色合がかなり暗く，寧ろClay colorを帯びたSlate blackと云い得可きものであった．《引用おわり》
    
  • 《p. 313より引用》
    RESUME
    Talpidae
    Mogera insularis (SWINHOE) 1862
    Locality; Taihoku; Mokusaku, Sozan (Taihoku-Shu); Rian (Taito-Cho). Probably throughout the whole level. Only one form of this species, provided with a pelage of somewhat darker color, has been collected from Arisan (2200 m., Tainan-Shu).《引用おわり》
    
    
    
• 岸田久吉 (1936) 日本の動物. Pp. 294-295. 国民百科大辞典. 第10巻. 冨山房, 東京. 900 pp. (昭和11.7)
  Kishida, Kyukichi (1936) Mammals of Japan*. Pp. 2594-295. Kokumin hyakka daijiten*. Fuzanbo, Tokyo. 900 pp.
  
  
  • 《p. 295より引用》
    台湾の低地にはヒメモグラ・カノヂネズミ・トゲネズミ（中略）等が生息し，殊に爬虫類・両生類は破格に種類も個体数も多い．温帯林から上の高地には，ケムリトガリネズミ・チビヲネズミ・ヤマヂヒメモグラ・アリサンネズミ・キクチハタネズミ（中略）が見出される．《引用おわり》
    
    
    
• 岸田久吉 (1936) 台湾の生物（二）. 理科教育 vol. 5 no. 7: 21-23. (昭和11.7)
  
  
  • （二）は爬虫類について書かれている．
    
  • 台湾の生物は上記2つの論文で完．
    
  • 同じ理科教育に後に連載された樺太の生物界(1938)は哺乳類を含んでいるが，台湾の生物は爬虫類のみで完結している．
    
    
    
• 《1936.7: 日本学術振興会学術部の『昭和10年度後期 事業報告(S10.11.1-S.11.3.31)（1936.9刊）』によれば，岸田久吉は日本学術振興会から“日本産◆(虫ヘンに卑＝ダニ)類の研究”で1935年度700円，1936年度400円の予算を獲得している．この資金で1935年度は台湾調査，1936年度は朝鮮調査をおこなった．》
  
  
  
• 岸田久吉 (1936) 山林に多い野鼠の種類. 山林彙報. vol. 31 no. 3: 1-5. （昭和11.9）
  
  
  
• 岸田久吉 (1936) 日光の獣類. Pp. 257-287 + 図2枚. 日光の植物と動物. 東照宮, 日光, 栃木. 622 pp. (昭和11.12) 《（注）印刷　ヘラルド社; 売捌所　養賢堂》
  Kishida, Kyukichi (1936) Mammals in Nikko*. Pp. 257-287 + 2 plates. Plants and Animals in Nikko*. Toshogu, Nikko, Tochigi. 622 pp.
  
  
  • 《p. 265より引用》
    コモグラ
    先年筆者が菖蒲ケ浜近くの林地で拾得した屍にもとづいて名付けものであるが，其の後美彌来《（注）ミヤコノとルビあり》瀧や大平でも採集せられ，又鬼怒川上流地方の山奥でも見付かった．内地の高地棲のモグラであって，台湾高地のヤマヂモグラが低地のヒメモグラに対すると同様な関係を，アヅマモグラとの間に有つところの甚だ興味ある種類である．《引用おわり》
    
  • 日光での調査は1931年に行なわれた．また，末尾に原稿をまとめたのは1932年11月30日と書かれている．
    
  • 文献目録に以下の論文が挙げられているが，どちらも，高島 (1948)によれば未刊．
    Kishida, K. (1930) Moles from Nikko district, Japan. Lansania vol. 3, no. 22 (掲載ページ不詳)
    Kishida, K. (1931) 日本中帯のMammal fauna. Lansania vol. 3, no. 29 (掲載ページ不詳)
    
    
    
• 《1937（昭和12.6）年．長女（田鶴子）敗血症で死去》
  
  
• 黒田長礼 (1937) 脊椎動物大系, 哺乳類. 三省堂, 東京・大阪. 288 pp. (昭和12.6)
  Kuroda, Nagamichi (1937) Vertebrates, Mammals. Sanseido, Tokyo & Osaka. 288 pp.
  
  
  • 《p. 227より引用》
    モグラ(Mogera wogura wogura (TEMMINCK)，英名Japanese mole)は本州に産し，吾人の最もよく知る体形の動物で（中略）．亜種は多く北緯35度10分以南の東海道沿岸から近畿及び中国地方に分布し大形で暗赭褐色（下面にありて，然り）を呈し，モグラの如く黒味がないコウベモグラ(M. wogura kobeae THOMAS)がいる．四国・九州・対馬に産するものは夫々多少の差を示し，ヤクシマモグラ(M. wogura kanai THOMAS)は種子島と屋久島に産し小形で，台湾には最小のタカサゴモグラ(M. insularis (SWINHOE))が居り，朝鮮にはチョウセンモグラ(M. wogura coreana THOMAS)と北鮮にはオオモグラ(M. robusta NEHRING)がある．《引用おわり》
    
    
    
• 岸田久吉 (1937) 動物分類学研究法−脊椎動物−. 生物学実験法講座第1巻. 建文館, 東京. 92 pp.（昭和12.7）
  
  
  • 《p. 82より引用》
    モグラ科は日満地方に4属知られている．その識別は次表によって出来る．
    （ヒメヒミズ属 Dymecodon，ヒミズ属 Urotrichusを記述したのちに）
    
    C 體は小さく夏毛と冬毛は大差ない色合をしてゐる．上顎の犬歯は1根性である．・・・・ヒメモグラ属 Mogerula.
    CC 體は大きく，夏毛は冬毛よりも黒ずみ且つ胴腹後下方に黄條を欠いている．上顎の犬歯は2根性である．・・・・モグラ属 Mogera.
    
    モグラ科の種数は少ないから，岸田−哺乳動物図解及び日本産モグラ属ならびに堀川−台湾哺乳動物図説によって大体査定し得られる．満州にはカウライモグラとオホモグラの1属2種を産する．《引用おわり》
    
    
    
• 岸田久吉 (1937) 高山の鳥獣と其の由来. 理学界. vol. 35 no. 8: 742-749.（昭和12.8）
  
  
  • 内地産の高山の鳥獣についての記述．モグラの記述はない．
    
    
    
• 王雨卿・高島春雄 (1938) 日本産翼手目資料. 台湾博物学会会報. vol. 28 (no. 176): 162-175.（昭和13.5）
  Oo, U-Kijo & Takashima, Haruo (1938) The material for Japanese bats (Chiroptera)*. Transactions of the Natural History Society of Formosa. vol. 28 (no. 176): 162-175.
  
  
  • 台湾産を含む日本の翼手目に関する詳細な記述．
    
  • 参考文献は，翼手目以外も含んでおり，貴重な資料である．
    
    
    
• 王雨卿 (1938) 台湾産哺乳類の検索及び名彙. 兵庫県博物学会会誌. no. 12: 95-140. (昭和13.6)
  Oo, U-Kijo (1938) Taxonomy and local names of Formosan mammals*. Hyogo-ken Hakubutsugakkai Kaishi (Journal of the Natural History Society of Hyogo Prefecture). no. 12: 95-140.
  
  
  • 《p. 103-104より引用》
    ［備考］　上記の外に岸田久吉氏によれば，ヤマヂヒメモグラを産し，次の学名の御教示に預かったが，未だ正式の記載を見ないので本篇には除外した．
    Mogerula montana Kishida (1932). Lansania. vol. 4.《引用おわり》
    
    
• 高島春雄 (1938) 王雨卿氏の面影. Acta arachnologia vol. 3 no. 3: 124-127. (昭和13.??)
  Takashima, Haruo (1938) Biography of the late Mr. Oo U-Kijo*. Acta arachnologia vol. 3 no. 3: 124-127.
  
  
  • この記事には，「台湾産哺乳類の検索および名彙 (1938)」は王氏の最後の論文で，印刷されたのを見ずに永眠されたと記されている．享年32歳．王氏が論文に「Mogera montana Kishida (1932)は未記載」であることを記してくれたことに感謝したい．
    
    
    
• 黒田長礼 (1938) 日本産哺乳類目録. ヘラルド社, 東京. 122 pp. (昭和13.6)
  Kuroda, Nagamichi (1938) A list of the Japanese Mammals. Herald-sha, Tokyo. 122 pp.
  
  
  • 《p. 90より引用》
    Mogera insularis (SWINHOE) タカサゴモグラ（高砂もぐら《＝鼠ヘンの右に"日"の下に"安"，および"鼠"の2字熟語》−黒田），タイワンモグラ［岸田氏］，ヒメモグラ［低地産−岸田氏］，ヤマヂモグラ［高地産−岸田氏］，ツンテェツー（串地鼠）［台湾］
    1862. -Talpa insularis SWINHOE, P.Z.S., p. 356 (Formosa).
    Formosan Blind Mole.
    Formosa (SWINHOE, KISHIDA): Bokusaku （木柵） (HORIKAWA); common from lowlands up to mountain, but less common than in Japan (HOIRIKAWA); Taihoku (KURODA); Riran （里らん《＝土ヘンに龍》） in Taito (in YAMASHINA coll.) (KURODA).《引用おわり》
    
    
    
• 岸田久吉 (1938) 樺太の生物界. 理科教育 vol. 7 no. 6: 4-7. (昭和13.6)
  
• 岸田久吉 (1938) 樺太の生物界. 理科教育 vol. 7 no. 8: 81-85. (昭和13.8)
  
• 岸田久吉 (1938) 樺太の生物界. 理科教育 vol. 7 no. 9: 20-29. (昭和13.9)
  
• 岸田久吉 (1938) 樺太の生物界. 理科教育 vol. 7 no. 10: 149-161. (昭和13.10)
  
  
  • 1937年8月，日本学術振興会からの助成により岸田が行った樺太調査について記してある．
    
    
    
• 岡田弥一郎 (1938) 日本脊椎動物目録. 丸善, 東京. 412 pp.（昭和13.10）
  Okada, Yaichiro (1938) A catalogue of vertebrates of Japan. Maruzen, Tokyo. 412 pp.
  
  
  • p. 1．台湾のモグラについてはタカサゴモグラMogera insularisのみ．他に，モグラM. wogura wogura，コウベモグラM. wogura kobeae，ヤクシマモグラM. wogura kanai，ミチノクモグラM. wogura minor，チョウセンモグラM. wogura coreana，オオモグラM. robustaが挙げられている．
    
    
    
• 《1938年，鳥獣調査室が新営され，農事試験場から林業試験場へ移転した．→1963年の標本返還事件まで24年間も標本が放置されたということか》
  
  
• 岸田久吉 (1939) 中支の動物相について. Lansania, vol. 11. no. 110.
  • 未刊と考えられる．
    
  • 岸田久吉 (1953) 代表的林棲哺乳動物ホンザル調査報告. 鳥獣調査報告. vol. 14. 農林省林野庁, 東京 92 pp.（昭和28.7）の参考文献に記述があるが，頁数不詳．
    
    
    
• 鹿野忠雄 (1940) 台湾次高山彙の哺乳類の高度分布. 動物学雑誌. vol. 52, no. 2: 71. （昭和15.2）
  Kano, Tadao (1940) On the altitudinal distribution of mammals in the Tsugitaka mountains. Zoological Magazine, Tokyo (Dobutsugaku Zasshi). vol. 52, no. 2: 71.
  
  
  • 日本動物学会大会の講演要旨．
    
  • 食虫類と翼手類を除く台湾産哺乳類の高度分布を議論している．
    
    
    
• 高島春雄 (1940) 動物　脊椎動物. 研究社, 東京. pp. 237 (昭和15.4)
  Takahashi, Haruo (1940) Animals. Vertebrates*. Kenkyusha, Tokyo. 237 pp.
  
  
  • 台湾のモグラの記述はない.
  • 日本の哺乳類の専門家として，青木文一郎（台北市），阿部余四男（広島市），岸田久吉（東京市板橋区小竹町2660），黒田長礼（東京市赤坂区），森為三（京城府）の5名が挙げられている（括弧内は住所）．
    
    
    
• 岸田久吉 (1940) 南支の動物相大観. 科学ペン. vol. 5 no. 6: 46-60.（昭和15.6?）
  
  
  • 《p. 49より引用》
    モグラ科は七属十二種類も居り，内地のフトモグラに似たものは，四川の西南からも知られ，台湾のヒメモグラにそつくりのものは，◆越，両広，及び海南にゐることがわかって居る（◆は門ヘンに虫）《引用おわり》
    
  • “フトモグラ=Mogera属”，“ヒメモグラ=Mogerula属”という意味なのだろうか？
    
    
    
• 《1940（昭和15.7）年．長男（享吉）結核で死去》
  
  
• 黒田長礼 (1940) 原色日本哺乳類図説. 三省堂, 東京・大阪. 311 p. (昭和15.7)
  Kuroda, Nagamichi (1940) A monograph of the Japanese mammals. Sanseido, Tokyo & Osaka. 311 p.
  
  
  • たかさごもぐらの項(p. 202-203)に以下
    《p. 202より引用》
    岸田氏(1936)は台湾高地産をヤマヂモグラと呼び，平地産をヒメモグラと呼べど実際此両者間に相違ありや否や詳ならず《引用おわり》
    
    
    
• 鹿野忠雄 (1940) 支那の生物. 支那地理大系, 自然環境編（渡辺光編著）, p. 319-390. 日本評論社（昭和15.10）
  
  
  
• Kano, Tadao (1941) Zoogeographical studies of the Tsugitaka mountains of Formosa. Doctoral dissertation submitted to the Kyoto University. ?? pp.
  鹿野忠雄 (1941) 台湾次高山彙の動物地理学的研究. 博士論文. 京都大学. ?? pp.（昭和16.3）
  
  
  • 未入力
    
    
    
• 《1941(昭和16)年6月21日，出版用紙配給割当規定施行》
  
  
• 岸田久吉 (1942) 武蔵野の獣. 武蔵野 （第四版）. 田村剛・本田正次編. pp. 352-393. 科学主義工業社, 東京. （昭和17.3）
  
  
  • 日本近辺のモグラが12種挙げられているが，台湾に生息するものは割愛されている(p. 353-354)．
    
  • アズマモグラの生態が詳しく記述されている．岸田が「長年しらべた」結果であるという．
    
    
    
• 《1942年7月，鹿野忠雄，マニラに赴任．〜1943年3月》
  
  
• 《1943年10月，学徒出陣はじまる》
  
  
  • 早稲田大学第二高等学院の『稲苑』出陣記念号(発行年未詳：たぶん1943年末または1944年初頭に発行)に，岸田久吉が“Ｏ組の諸君に与ふ”と題した文を寄せている．この時期，岸田が今の早稲田大学で教鞭をとっていたということは事実であった．
    
    
    
• 岸田久吉 (1944) 日本列島の獣類. 自然科学観察と研究叢書 日本列島篇. 本田正次編. pp. 127-159. 山雅房, 東京. （昭和19.1）
  
  
  • 当時の日本領全域（朝鮮，樺太，台湾，東南アジア諸国，大平洋の島々を含む）の哺乳類の分類と分布論を展開した岸田哺乳類学の集大成．
    
  • 《p. 130より引用》
    台湾から南支那，海南島などに亘る暖かい地方に居る小形のモグラ科がある．それをヒメモグラ属と云う．台湾低地にはヒメモグラ（異名　タカサゴモグラ，タイワンモグラ），トウブヒメモグラ，高地にはヤマヂヒメモグラと云うが如く，三種が棲息してゐる．《引用終わり》
    
  • つまり，岸田 (1933)と岸田 (1944)の間に，岸田は台湾に3種目のモグラ（トウブモグラ）を認めたことになる．記載論文は未だ見つかっていない．
    
  • 農林省嘱託とともに早稲田大学教授という肩書がみられる
    
  • 早稲田大学百年史第4巻(1992.12.20刊)によると，岸田は15.11〜19.11まで第二高等学院に在職し，自然科学，資源科学（動物）研究を教えていた．
    
    
    
• 徳田御稔 (1944) 大東亜の動物　哺乳類・南方篇. 精華房. 大阪. 357 pp. (昭和19.1)
  Tokuda, Mitoshi (1944) Animals of East Asia. Mammals in Southern area*. Seikabo. Osaka. 357 pp.
  
  
  • 東南アジアからオーストラリア，ニューギニアを含む哺乳類の生物地理学．台湾も範疇であるが，台湾のモグラの記述はない．
  • 戦前の日本の海外での哺乳類研究のまとめのような存在．
    
    
    
• 直良信夫 (1944) 日本哺乳動物史. 養徳社. 丹羽, 奈良. 265 pp. (昭和19.7)
  Naora, Nobuo (1944) The History of Japanese Mammals*. Yotokusha. Niwa, Nara. 265 pp.
  
  
  • 《p. 150より引用》
    日本現生哺乳類目録
    食虫類
    モグラ科　この科の中には，下記名の他に，サドモグラ，タカネモグラその他があるといわれているが，詳細は未だ明らかでない
    １ アヅマモグラ Mogera wogura wogura (Tem. et Sch.) 関東及び中部日本　モグラ，ムグラ，モグラモチ，オグラモチ
    ２ カウベモグラ Mogera wogura kobeae Thomas 近畿中国地方及び九州の一部　四国に産するものは，岸田氏によりて，シコクモグラとして別種とせられる
    ３ ヤクシマモグラ Mogera wogura kanai Thomas 九州南部，屋久島，種子ケ島
    ４ ミチノクモグラ Mogera wogura minor Kuroda 東北地方　コモグラ，モモオモヅ，モグラモヅ
    ５ テウセンモグラ Mogera wogura coreana Thomas 南朝鮮　カウライモグラ
    ６ タカサゴモグラ Mogera insularis (Swinhoe) 台湾　タイワンモグラ，ヒメモグラ，ヤマヂモグラ，ツンテエツー　台湾の高地と低地のものは別種とされているが詳細は明らかにされていない
    ７ キタマンシュウモグラ Mogera robusta Nehring 北朝鮮より北満及びアムール地方　オオモグラともいわれているが，北満州に多いものであるから，私は之をキタマンシュウモグラと呼んでいる
    ８ キウシウヒミズ Urotrichus talpoides talpoides Tem. et Sch. 九州地方　ヒミズモグラ，ヤマモグラ，ヤマウグラ，ドイネズミ，キウシウヒメズ，ヒメムグラ，コムグラ《引用おわり》
    
    
    
• 《1945年（昭和20）．鹿野忠雄，北ボルネオで消息を絶つ》
  
• 《1945年（昭和20）．台湾が日本領でなくなる→そのため，台湾のモグラは日本人研究者から忘れられた存在となった》
  
  
• 《1948年（昭和23.3.31）〜1960年（昭和35.3.31）．岸田久吉，林野局（後の林野庁）に在職．林業試験場保護部併任（1959年〜1960年）》
  
  
• 高島春雄 (1948) 珍文献「ランザニア」既刊号一覧. 虫聖会機関誌エントモフィリア. no. 2: 4.
  
  
  • 既刊の号：Vol. 1 nos. 1-10 (1929), Vol. 2 nos. 11-20 (1930), Vol. 3 nos. 21, 24, 27 (1931), Vol. 4 nos. 31, 38 & 40 (1932), Vol. 5 not published (1933), Vol. 6 nos. 52 & 60 (1934), Vol. 7 no. 69 (1935), Vol. 8 nos. 75 & 79 (1936).
    
  • 別刷のみ印刷された分：Vol. 3 no. 23: 47-48, Vol. 3 no. 25: 72-75, Vol. 8 no. 58: 113-115, Vol. 8 no. 58: 125-128, Vol. 13 no.l 127: 97-100 (1941). （注：Vol. 8 no. 58: 113-115およびVol. 8 no. 58: 125-128の巻号はVol. 6 no. 58の誤記である by 安田）
    
  • このほかにエントモフィリア no. 3(1950)とno. 5（1952）に補遺があり，それらによると，Vol. 3 no. 23 (1931): 36-40, Vol. 3 no. 26: 83-90 (1931), Vol. 6 no. 58: 125-128 (1934)の別刷が存在する(2005.12記)．
    
  • 上記をすべて合わせたものを高島セットと呼ぶことにする．
    
  • その後の調査で，高島セット以外の論文も発見された(2005.12記)．
    
    
    
• 今泉吉典 (1949) 分類と生態・日本哺乳動物図説. 洋々書房, 東京. 348 pp.（昭和24.3）
  Imaizumi, Yoshinori (1949) The Natural History of Japanese Mammals. Yoyoshobo, Tokyo. 348 pp.
  
  
  • 今泉哺乳類学の始まり．
    
  • 《序より引用》
    本書を世に送るに当り，私が特に銘記しなければならぬことは，岸田久吉氏の多年に亘る御好意である．氏は私が哺乳動物の研究に着手して以来今日に到るまで，断えず御指導と御鞭撻とを賜ったのみならず，学問の自由を尊重せられ，研究上私の見解が氏と相反する方向に進みつつある際にも，それを快く寛容され，更に激励の辞さえ惜しまれなかった．かかることは，口に易くして行い難きもので，氏のこの御好意は私の深く感謝し措かないところである．《引用おわり》
    
    
    
• Kuroda, Nagamichi (1952) Mammalogical history of Formosa, with zoogeography and bibliography. Quarterly Journal of the Taiwan Museum. vol. 5, no. 4: 262-304.（昭和27.12）
  
  
  • リストにはMogera micrura insularisのみ．黒田は最終的に台湾のモグラに左記の種名を与えた．
    
    
    
• 《岸田久吉 (1953) 代表的林棲哺乳動物ホンザル調査報告. 鳥獣調査報告. no. 14. 農林省林野庁, 東京. 92 pp.（昭和28.7）
  Kishida, Kyukichi (1953) Notes on the autochthony and endemicity of the Japanese Macaque with a description of its present haunts in Japan and of the bearing upon human life. Ornithological and Mammalogical Report. no. 14. Ministry of Agriculture and Forestry, Japan. Tokyo. 92 pp.》
  
  
  
• 《岸田久吉 (1954) モグラの蕃殖性について. 動物学雑誌. vol. 63 nos. 3&4: 93-94.（昭和29.4）》
  
  
• 《岸田久吉 (1956) 私の好きな虫きらいな虫. 10. 岸田久吉. 新昆蟲. vol. 9 no. 10: 10-11.
  
  
• 岸田久吉が自分と虫のことを綴った短いエッセイ．写真つき．》
  
  
  
• 《岸田久吉 (1957) Ochotonidaeの解剖について. 動物学雑誌. vol. 66 nos. 2&3: 152-153.（昭和32.2&3）》
  
  
• 《岸田久吉 (1958) 日本の小型イタチ類. 動物学雑誌. 67(1&2): 53-54.（昭和33.1&2）》
  
  
• 岸田久吉 (1959) モグラの習性とその防除. 植物防疫. vol. 13 no. 4: 165-166. （昭和34.4?）
  
  
• 《岸田久吉 (1959) 日本産ヤマネ科の骨格. 動物学雑誌. vol. 68 nos. 2&3: 108-109.（昭和34.2&3）》
  
  
• 《岸田久吉 (1960) 樺太の哺乳動物相. 鳥獣集報. vol. 17 no. 2: 241-282. 農林省林野庁, 東京.（昭和35.3）
  Kishida, Kyukichi (1960) Fauna Mammalium Saghaliensis. (1932). Japan Wildlife Bulletin. vol. 17 no. 2: 241-282. Ministry of Agriculture and Forestry, Japan. Tokyo.》
  
  
• 《岸田久吉 (1960) 千島群島の哺乳動物相. 鳥獣集報. vol. 17 no. 2: 283-306. 農林省林野庁, 東京.（昭和35.3）
  Kishida, Kyukichi (1960) Fauna Mammalium Kurilense Japonianum. (1932). Japan Wildlife Bulletin. vol. 17 no. 2: 283-306. Ministry of Agriculture and Forestry, Japan. Tokyo.
  
  
  • この論文の最後(p. 306)に以下の記述あり「以上の2文は，1932の「彙報 」に載せるために書いたままになっていたものである．殆んど当時の姿で，ここに出した．−筆者」
    
  • 1932年は忙しかった？》
    
    
    
• 《岸田久吉 (1961) 日本産ウサギ科の頭骨と習性との連関. 動物学雑誌. vol. 70 nos. 1&2: 61.（昭和36.1&2）》
  
  
• 《1960年（昭和35.3.31）．岸田，林野庁を辞職．ただし，その後も林業試験場には週に何度か来ていた（高野肇氏より）》
  
  
• 岸田久吉 (1961) The Osteology of the Kamasisi, Capricornulus crispus （=カマシシの骨学的研究）. 博士論文. 広島文理科大学. （昭和36.9）
  
  
  • 理学博士を取得．
    
    
    
• 《1962年（昭和37.5.31）．高島春雄死去．》
  
  
• 岸田久吉 (1962) . 博士論文. 東京農業大学. （昭和37.?）
  
  
  • 農学博士を取得．
    
    
• 《岸田久吉 (1962) 若いカマシシに見た骨学的異常. 動物学雑誌. vol. 71 nos. 11&12: 390.（昭和37.11&12）》
  
  
• 《1963年（昭和38.11.26）．標本返還事件（森本氏からの情報）．》
  
  
• 《1968年（昭和43.10.4）．岸田久吉死去．》
  
  
• 河田党 (1968) 岸田久吉博士をいたむ. 日本応用動物昆虫学会誌. vol. 12 no. 3: 177-178.（昭和43.10）
  
  
• 今泉吉典 (1969) 岸田久吉先生を偲ぶ. 哺乳動物学雑誌. vol. 4 no. 3 : 93.（昭和44.3）
  
  
• 陳兼善 (1969) 台湾脊椎動物誌. 増訂再版. 上冊. 台湾商務印書館, 台北, 台湾. 548 pp. (昭和44.11)
  Chen, Johnson. T. F. (1969) A Synopsis of the Vertebrates of Taiwan. Revised edition. I. Business Printing Taiwan*, Taipei, Taiwan. 548 pp.
  
  
  • 台湾のモグラについての記述なし．
    
    
    
• 陳兼善 (1969) 台湾脊椎動物誌. 増訂再版. 下冊. 台湾商務印書館, 台北, 台湾. 440 pp. (昭和44.5)《下冊のほうが印刷月は先》
  Chen, Johnson. T. F. (1969) A Synopsis of the Vertebrates of Taiwan. Revised edition. II. Business Printing Taiwan*, Taipei, Taiwan. 440 pp.
  
  
  • 《p. 350より引用》
    Mogera insularis (SWINHOE)
    英名 Formosan Blind Mole; 亦名串地鼠（串＊（当の旧字）係穿之誤），高砂もぐら《＝鼠ヘンの右に"日"の下に"安"，および"鼠"の2字熟語》．産台北，台東．黒田氏名為 Talpa micruna insularis (SWINHOE)．《micrunaはmicruraの誤り》《引用おわり》
    
  • 文献として，Kuroda (1952) Mammalogical history of Formosa, with zoogeography and bibliography. Quarterly Journal of the Taiwan Museum. vol. 5, no. 4: 262-304.
    
    
    
• 山根柄根 (1992) 鹿野忠雄　台湾に魅せられたナチュラリスト. 平凡社. 東京. 335 pp.（平成4.2）
  
  
• 1978年（昭和53.4）．林業試験場，目黒から筑波に移転．
  
  
  • 移転に先立って，1977年11月〜1998年2月頃まで標本の整理をした．標本の管理は鳥獣第二研究室（高野，三島，白井）が行っていたが，彼らは主に鳥類の担当だったので，哺乳類の標本については，鳥獣第一研究室（阿部，北原）が担当した．哺乳類では，ネズミ類とモグラ類の液浸標本が大量にあった．標本にはラベルがなく，標本が誰のものか不明であった．ラベルがついていないものは，ほとんど構内に穴を掘って埋めた．ラベルがついているものは筑波に送った．標本がきちんと管理されておらず，残念だったという印象が残っている．（北原英治氏より聞き書き）
    
    
    
• 萱嶋泉 (1999) 東京蜘蛛談話会発足の前後の事情. Kishidaia. 76: 2-5.（平成9.5）《リンク》
  
  
  • 岸田久吉の死後，彼の蔵書は萱嶋らによって整理され，東京農業大学図書館に寄贈された(1968.12)．
    
    
    
• 2000.09.29 日本哺乳類学会2000年度大会（大阪）．
  
  
  • 「（台湾の山地性モグラについての話が）最初に哺乳類学会で蒸し返されたのは，2000年の哺乳類学会大会自由集会「増補食虫類の自然史２，東アジア産モグラの系統分類を検討する」での横畑先生の講演「頭骨多変量解析による東アジア産モグラ類の種内変異と系統解析」で，同じ年に同様の口頭発表が本川氏により成されていたため，横畑先生の発表に対して出た指摘「台湾の山地のモグラがMogera montanaと記載されているのをご存知ないのですか？」の一言に始まります．」（川田伸一郎氏より）
    
    
    
• 金子之史・前田喜四雄 (2002) 日本人の研究者による哺乳類の学名と模式標本のリスト. 哺乳類科学 vol. 42: 1-21.（平成14）
  
  
  • 岸田が記載した哺乳類がリストに含まれている．
    
    
    
• 東京蜘蛛談話会例会 (2002.4.21) 《リンク》
  
  
  • 「Lansaniaの欠号は公刊されていない袋入りの原稿はあった．岸田文庫を整理したときに，八木沼健夫に送った．そこで保管されているはず．（萱嶋泉）」
    
    
    
• 2003.09.22 日本哺乳類学会2003年度大会（盛岡）．
  
  
  • 「増補食虫類の自然史４．食虫類の“島嶼”生物学」において，川田伸一郎＠名古屋大が「台湾のモグラに関する最近の知見−幻のモグラ，Mogera montanaの再発見とその分類学的位置に関する一考察」の報告を行った．それに感化されて，安田雅俊＠森林総研は岸田久吉の足跡をたどりはじめた．
    
    
    
• 2004.05 第40回日本動物分類学会大会（千葉）．
  
  
  • 川田伸一郎・篠原明男・小林秀司・原田正史・織田銑一・林良恭が「台湾産モグラの地理的変異と種分類」を学会発表．
    
    
    
• 2005.05 安田雅俊＠森林総研と川田伸一郎＠科博は，練馬区桜台の広徳寺別院にある岸田久吉（研精院壽翁宗久居士）の墓を訪れた．
  
  
• 2005.06 安田雅俊＠森林総研と川田伸一郎＠科博は，東京農業大学にある岸田久吉記念文庫を訪れた．約1000冊の彼の蔵書が保管されている．ただし，岸田が所蔵していた書籍全部ではない．
  
  
• 2005.07 安田雅俊＠森林総研は，農業環境技術研究所（旧農事試験場）に哺乳類の標本の所蔵状況を確認した．
  
  
• 2005.07 安田雅俊＠森林総研は，森林総合研究所の哺乳類の標本をチェックした．岸田標本の一部はここに所蔵されている．しかし，標本の詳細はラベルに記載されていないものが多い．
  
  
• 2005.08 安田雅俊＠森林総研と川田伸一郎＠科博は，山階鳥類研究所の資料室を訪ねた．
  
  
• 2005.10 安田雅俊＠森林総研は九大農学部の江崎梯三文庫に所蔵されているLansaniaと岸田の別刷を閲覧した．
  
  
• 2005.10 安田雅俊＠森林総研は森本氏（元森林総研）氏に電話で照会した．
  
  
  • 以下はメモ：森本が渡英中に岸田が亡くなったので、蔵書や標本の行方は知らない。目黒の林業試験場の研究室には蔵書はスチールのロッカーひとつのみだった。自宅に本がたくさんあったと思う。昭和38年に次のような出来事があった（後に1963年11月26日と判明）。岸田が西原の農事試験場から目黒の林業試験場に移ったあと、農事試験場に残されていた蔵書や標本や原稿などの引き取りをなかなかしなかったため、ある日農事試験場の職員が、トラックにミカン箱をぎっしり積んで林業試験場に運んできた．そして、ミカン箱をもって帰るために、中身を無造作にどんどん放りだした。標本や原稿が床に散らばり、山のように積み上げられた。その整理を森本は手伝った。寒い頃だったと記憶している。そのなかにLansaniaの発行原簿があった。整理したなかにLansaniaの別刷もあった。発行原簿と照らし合わせたが、現物がないものが多かった。それを後に、それとなく岸田にたずねたところ、戦争末期の紙がない時期に、古紙業者がやってきたので、そのあたりのものを持っていけといったら、印刷してまだ配っていない別刷の束をもっていってしまったことがあるとのこと。岸田は発行したと言っていたが、実際には配布されなかった別刷があるようだ。また，当時日本領だった南太平洋や台湾のコウモリを絵描きにかかせたすばらしい原図のセットがあったが、結局、印刷されることはなかった。現在の所在は不明。
    
    
    
• 2005.11 森本氏からの連絡．
  
  
  • Lansaniaの発行原簿の写しを確認したが，vol. 4には台湾のモグラの記載論文らしき題名はなかった．
    
    
• 2005.12 安田雅俊＠森林総研と川田伸一郎＠科博は，岸田文庫（国分寺）を閲覧した．
  
  
  • 以下はメモ：Lansaniaのフルセットが揃っている．高島セット以外の論文が存在することが判明した．岸田が死去した後，有志で蔵書の整理をしたが，標本はほとんどなかった．標本は林業試験場のほうにあったのではないか．蔵書の一部はここと東京農大にあるが，ほとんどは古本屋（本郷の考古堂書店）が持って行った．
    
    
• Ono, Hirotsugu (2005) Revision of spider taxa described by Kyukichi Kishida: Part 1. Personal history and a list of his works on spiders. Journal of Arachnology 33: 501-508.
  
  
  • 科博の小野展嗣氏がまとめた岸田の経歴とクモ関係の論文一覧．
    
    
    
• 2006.01 安田雅俊＠森林総研は岸田文庫の資料に基づきLansaniaの全掲載論文リストを作成した．
  
  
• Kawada, S., Shinohara, A., Kobyashi, S., Harada, M., Oda, S., and Lin, L.-K. (2007) Revision of the genus Mogera (Mammalia: Lipotyphla) from Taiwan. Systematics and Biodiversity 5: 223-240.
  
  
• Yasuda, M. and Kawada, S. (2007) Notes on the validity of Mogera montana Kishida, 1932, for a mountain mole from Taiwan. Mammal Study 32: 169-172.
  
  
• Tennent, W. J., Yasuda, M., and Morimoto, K. (2008) Lansania Journal of arachnology and zoology - a rare and obscure Japanese natural history journal. Archives of natural history 35(2): 252-280.
  
  
• 終わり [End]
  
  
  

個人的なリンク 青木文一郎 (Aoki, Bunichiro) [1, 2, 3] 堀川安市 (Horikawa, Yasuichi) [1, 2] 鹿野忠雄 (Kano, Tadao) [1, 2, 3] 岸田久吉 (Kishida, Kyukichi) [1, 2, 3] 木場一夫 (Koba, Kazuo) [1, 2] 黒田長礼 (Kuroda, Nagamichi) [1, 2] 直良信夫 (Naora, Nobuo) [1, 2] 高島春雄 (Takashima, Haruo) [1, 2] 田中亮 (Tanaka, Ryo) [1, 2] その他 [1, 2, 3]